教職大学院での数学教育法(自主講座)




教育

授業の基本的な考え方

実際の授業場面を想定した内容ではなく,授業者が自分の数学的背景を踏まえた上で授業展開可能になるようなテーマを設定した.その上で,授業力を向上させる意味での次のような視点をおいた.

内容として
・一貫性と関連性を意識した授業展開 ・数学の歴史を意識した授業展開
方法として
・疑問から生まれる授業展開 ・ICTの活用を前提とした授業展開 ・数学実験を取り入れた授業展開

授業計画

回数     内   容  
 数学の歴史(角について)
 積分とは,そして積分の歴史(面積から積分まで)
 面積・体積指導について(小学校から高等学校までの指導の場面)
 関数から微分の歴史(小学校の正比例から微分積分の基本定理まで)
 円周率πの話題(円周率とは,実験で求める円周率,無限級数での円周率)
 虚数i の話題(自然数から複素数まで.数の体系)
 自然対数の底e の話題(実験で求めるe .世界で最も美しい公式,オイラーの公式)
 小学校の正比例から高等学校の一次変換まで
 数の拡張としてのベクトル
10  集合と論理(いろいろなパラドックス.命題論理と述語論理,数学的帰納法)
11  確率とそのパラドックス
12  統計の話題
13  整数の話題(素数,完全数,友愛数など不思議な数)
14  実験数学(席替え問題を例に)
15  総合演習


今後の課題 −教職大学院での教員養成の可能性−

21世紀に向けて子ども達に身につけて欲しい力とは,自らの自由や幸福追求できる問題発見・解決能力,批判的思考力とともに,社会的文脈の中での望ましい勤労観,コミュニケーション力,協調力,社会的責任力であろう.このような時代要請をうけて教育の改善を視野に入れた教員養成が不可欠になると考える.

そのために,まずは教科の再編成を視野に入れた教科教育法の再検討である.学部の教員養成課程では依然として伝統的な教科中心の「教科教育法」が実施されているが,大学院レベルでは単一教科でない学際的な教科間でのカリキュラムや授業法の研究開発が必要である.すなわち上記の例のように物理と数学や,数学と関連するさまざまな教科との教科横断型カリキュラムの開発である.

次は授業モデルの改善である.従来の黒板とチョークからの授業からの脱却が不可欠である.ICTの活用はこれら伝統的な授業モデルの革新となるがすべての授業者がすべての授業において展開できる訳ではない.しかし,ICTを用いた授業設計力を身につけることで,ICT環境が不十分な場合でもその本質的な展開が可能である.
以上見てきたように,これからは教科に関する深い知識だけでなく,新しいまなびの創造者として,学際的・情報的な視野もった人材の育成とそのための教員養成のあり方が大きな課題となってくる.